いよいよ来週(2013年2月8日)に、単著としては2年ぶり4冊目となる「ウェブ配色 決める!チカラ 問題を解決する色彩とコミュニケーション」が発売されます。そこで今回の書籍はどういうことを考えて書いたのかなどをまとめてみたいと思います。
もう書きたいことなんてないと思ってました
正直なところ、書き始めるまでは今までの3冊で書きたいことは全部書いたつもりでいました。
1冊目は「効果的に伝えるWeb配色標準デザインガイド―ユーザビリティ/アクセシビリティ/マーケティングを考慮したサイトの色彩設計からの配色の実際まで」という本でした。どう見てもAmazonに対するスパムです・・・。自分が配色を行ったり、従来の配色の本に抱いていた違和感を解消することを考えて書いていたら、教科書のように淡々してしまいまして、正直なところこれはあまり売れなかったはずです。編集さんにはごめんなさいとしか言いようがない・・・。
2冊目は「Webプロフェッショナルのための黄金則 Web配色デザインのセオリー」です。前回の反省を踏まえ、図版も増やしました。配色の基本を学んでから、様々なデザインの局面でこう考えて色を決めるというという流れで、伝えたい内容もかなり上手くまとめられたと思っています。
3冊目の「ウェブ配色 コーディネートカタログ」ではいろいろなサイトを見ながら、ここではこういう意図で配色が使われているという感じでまとめました。2冊目とは逆のアプローチですね。
200近いサイトを選んだはずですが、なかなか満足の行くサイトがなかったり、あったとしても掲載を断られたりして、300以上のサイトはピックアップしたでしょうか。苦労したおかげで、重いことを除けば持ち歩いてクライアントとイメージの共有をしやすい「Web配色の見本帳」ができあがったと思います。
一番ややこしい部分をまだ書いてなかった!
配色なんてWebの技術が進化しても、今まで赤だったものが青になるわけでもなく、今まで暖かいと感じられている色が流行で冷たく感じられたりするわけではないのです。それに普通にカラーサンプルが並んでいるような見本帳は既にいいものが世の中に出ていますので、自分でやる必要はまったくないとも思っています(実際にそういう執筆は断ったこともあります)。なので、当分本は書かないだろうなぁと思っていました。
デザイナーが怖れるカンによるデザイン
ところが今回、お話をいただいたワークスコーポレーションの岡本さんや他のいろんな人と話をしているうちに、もう一つ伝えなければいけないことがあることに気づきました。今までの本は主に初中級のデザイナーに向けた本だったのですが、私が普段クライアント
と色の話をするのは、デザイナーに仕事を渡すためです。
つまりプロデューサーだったりディレクターの立場で私は色の提案をしているわけなんですね。まあ私の場合は色のことは何とでも話せますし、直接請け負った仕事の場合は、配色は坂本さんの言うことを聞きますと言ってもらえる場合も多いです。
ところが世間一般ではそうではなく、クライアントとの折衝はデザイン経験が不足しているディレクターさんだったり営業さんが行っていたりします。必ずしもクライアントさんがデザインや配色について詳しいわけではありませんし、むしろわかっていないことの方が多いはずです。要するに配色のことについてわからない同士が色の話をしているのです。
実はここに大きなボトルネックがあって、よくわからないから結局たいした情報も得られずに帰ってきて、「デザイナーに任せる」ことになります。任せるというと聞こえはいいですが、まあ丸投げですよね。
でも任されたデザイナーもろくな情報がないから、カンで勝負します。あるいは「参考サイト」と称する参考にならないサイトを元に、その色をそのまま流用して制作を行うくらいしかできない状況になります。
(あ、あくまで最悪の状況ということで、世の中全てがこうだとは思っていません)
そもそも「その参考サイトのデザインや配色の方向性って正しいの?」とか「そのサイト、すごくださいけど、本当に真似していいの?」という疑問は、「時間がない」というまったく合理性のない理由によって封じ込められたりします。
でもデザイナーさんはこう思ったりします。
「お前があと15分ほどきちんと話を聞いてくれば、こんなに苦労しなくて済むんだよ」みたいな。
カンで勝負するデザインがクライアントの好みに合うかどうかはわかりません。与えられた状況が少ないほど、分の悪い勝負になることは言うまでもありませんし、デザインを出して初めて相手の要望を聞いて、第2案を出すとか、「要望があるなら最初から言ってくれよ」となってしまいますよね。
「とりあえず3案」で地に落ちるモチベーション
もっとひどくなると「とりあえず3案出してよ」とか「明るいのと暗いのを両方作って」とかいうのもありますね。
例えるなら、「缶コーヒーを買ってきて」と言われて近くの自動販売機でBOSSを買ってきたら、「俺の缶コーヒーはRootsのAroma Impactのデミタスに決まってるやろ!」って言われてみたり。あるいは小腹が空いたから「幕の内弁当かパスタかどっちかを買ってきて」と言われて、幕の内を買ってきたら、「やっぱりカレーがよかった」とか言われるようなものです。
この時点でデザイナーのやる気は根こそぎ持っていかれていますが、仕事なのでやるしかない。時間がないからそこそこでタイムアップして50点の出来みたいなものを提出しないといけなくなったりするわけです。
それって誰か幸せになれるの?
きちんとしたコンセプトを話し合って、色もある程度定めておけば、デザイナーも着地点が見えやすいだろうし、どこかの真似をするにしても、真似もしやすいし。
工数が減ったら、ちゃんと細部にこだわる時間もできるし、成果物のクオリティも上がるんじゃないですか?
やっぱりコミュニケーションだよね
そのためには何が必要かなと考えたときに出てきたのが、きちんと必要な情報を聞き出すコミュニケーション能力・テクニックなんですよね。そんなことで、今回の書籍の方向性やタイトルも決まってきました。
まあ何をやっても色には好みがあるので、どうしてもトラブルも出てきます。論理的な指摘から、はっきり言って何を言っているのかわからないようなものまで・・・。でもそれに対する対処もいろいろありますし、解決に導くのもコミュニケーションですよね。
シーンごとに考えなければならないことは山ほどあるわけですが、まあちょっとした知識があれば回避できることもいっぱいあるわけで、今回の書籍では、最初の知識編で色について学んだことがない人でも最低限必要な用語などの説明や、おかしなことをしてしまわないためのWebで必要とされる配色の基本原理をまとめ、その後クライアントと話しておくべきことやそれをどのように落とし込んで配置していくかという実践編、また出会ったトラブルやサイトの種類や目的ごとの考え方を示した応用編の3つに分けてみました。
本の帯にもあるように、巻末対談をさせていただいた矢野りんさんには「よくもまぁ、これだけの項目を考えつくねw」と言われたわけですが、私が普段の業務で行っていることや、今までに出会ったトラブルとかその解決法などを思いつく限り書いてみました。
ちなみにこの矢野さんとの対談は、巻末には付いてきますが、先行でワークスコーポレーションさんのサイトで公開されておりますので、大笑いしている坂本はいったい何が楽しかったのか?という理由の一端を知りたいという特殊な趣味をお持ちの方はぜひご覧ください。
こんな風に役立つかも?
この本はデザイナーが読めば、こういうことを聞いておいてくれれば配色がしやすいので、打ち合わせに行く人に「○○について聞いてきてください」などと要求することもできますし、こういう場面ではこういう風に考えて色を絞り込むというケーススタディも学べるはずです。
プロデューサー・ディレクター・営業の場合には、クライアントが何を求めているのかを聞き、それをまとめてスムーズにデザイナーに伝達する参考にもなるでしょう。クライアント側であれば、こういうことを考えておいて伝えてあげれば、成果物のレベルが上がるんだなぁということで費用対効果を上げるためにも利用していただけるかと思っています。
特にクライアントと直接接する人には、ぜひこの本を読んでもらって、あと20分我慢していろいろ聞いてくれば、社内の工数も減るし、妙な手戻りや複数案も作らされることも減るしという感じで、コスト意識を持って読んでもらえれば一番うれしいかもしれません。
個人的にはどんな場合にしろ、企画・コンテンツがひどく、誰もほしくないような商品やサービスを「色の力で売り上げる」なんていうことは不可能だと感じでいます。もし色を変えて売り上げが倍になったとしたら、今までがひどかったから本来の半分しか売れてなかったんですねと私は解釈しちゃうのです。
逆に色を使って売れそうなものを売れなくしたりするのは簡単です。クライアントに納得してもらうカラーマーケティングの基礎知識やコミュニケーションスキルがなければ、失敗率が上がることはいうまでもあります。
セミナーでも常々申し上げていることですが、色は蛇口のような役割だと私は考えています。水が汚ければ(企画が悪ければ)どんなに蛇口が立派でも出てくるのは泥水です。逆にどんなに清水であっても、蛇口が壊れていれば水は出てきませんし、サビの味が付いてしまうかもしれません。
であれば、コンテンツの持つ本来の潜在能力をできる限り発揮させる条件を整えるのが色であり、デザインの役割なのではないでしょうか?
できるだけ多くの人に覚えてもらい、サービスなどの有益な情報を伝え、サイトが本来持っているはずの目的を達成させることで、初めて色は役割を果たしたんだなぁと思うのです。
もう一度言いますが、どのような情報を引き出せて、それを伝えられるかや、クライアントからの悪い意味での要望を跳ね返すだけの理論武装など様々な知識が必要になってきます。その最低限の部分について、今回の本でまとめられたのかなぁと考えています。少なくとも今までにはなかったWeb配色の本になったのではないでしょうか?
まあ専門書の宿命として、バカ売れして儲かるようなことはないと思いますが、もし興味を持っていただいたら、発売されたら買うというのではなく、Amazon辺りで予約していただければ、私も少し幸せになれますので、ぜひポチってあげてください。ついでにレビューとかをもらえるともっと幸せになれます。
予約特典的なもの?
買ってもらったからといって、何か贅沢な予約特典が付けられるわけではないのですが、買ったよってFacebookやTwitterのDMなどでお知らせいただければ、サイト上の重要チェックポイントをまとめたPDF(A4・1枚)でも差し上げたいと思います。
勝手ながらこの特典は発売日までにAmazonで予約していただいた方に限らせていただきますね。
ご連絡いただけるアカウントは以下になります。現在月末進行で立て込んでおりますので、発送は2月以降ということでお願いします。別にカードの明細だせとか、決済画面のスクリーンショットを撮れとかは言いませんので、ぜひお気軽にお申し付けください。
Facebookのメッセージで応募
TwitterのDMで応募
クラシックスタイルのメールアドレス
mixiだと3ヶ月後くらいに気づくとかになりかねませんのでご注意ください。今回はICQによる連絡も禁止とさせていただきます。
大阪・東京・名古屋でゲストを招いた出版記念セミナーを開催
あと既に募集も開始されておりますが、出版記念のセミナーを大阪・名古屋・東京の3都市で行います。色でコミュニケーションを取る際に気をつけておきたいことや、配色の最重要ポイントを見定められるようになることを目標にし、座学の講義に加え、簡単なワークショップもやります。
大阪では株式会社スワールコミュニケーションズの小山瑞穂さん、名古屋では株式会社うずまきデザインの野崎晃さん、東京では株式会社エフシーゼロ #fc0の山本和泉さんと、ゲストの方にも来ていただき、あまり他人の話を聞かずに生返事する癖のある私をなじってもらいます。おまけにこんな色のトラブルって、こう解決すればいいよねぇなんていう、それぞれの方の体験談なども伺う予定です。
2月8日(金) | 19:30〜21:30 | 大阪 |
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2月9日(土) | 14:00〜15:30 | 名古屋 |
2月14日(木) | 19:30〜21:30 | 東京 |
いずれの会場もまだ空席が残っているようですが、刊行記念で1,000円という非常にリーズナブルな価格に設定されておりますので、終了21時半かよ、遅すぎるよ!という方も、心に何か重い物や鬱屈した何かを抱えながら足を運んでいただければうれしく思います。
お申し込みはワークスコーポレーションのサイトから、クラシックスタイルでEメールを送ることになっております。一手間掛かりますが、ぜひ気力で乗り切ってみてください。
今月の22日(2013年1月22日)は岡山でも登壇いたしますが、その話はまた別の記事でご紹介したいと思います。
一般の人がおもしろいかは別として、Webサイトの配色のプロセスを知りたいというリクエストには可能な限り応えたつもりです。どうぞこの書籍「ウェブ配色 決める!チカラ 問題を解決する色彩とコミュニケーション」を今後ともよろしくお願いいたします。清き一票もとい1-Clickをお待ちしております。
予想はしてましたが、今回も長すぎてまとまりませんでした。
最後に一言でまとめます。買ってください!