配色の参考になる本はたくさんありますが、Webサイトの配色に関連が強いもの・使いやすいもの、に限ると、それなりに有益な本は絞られてきます。デザインの初中級者向けに、役に立ちそうな本をジャンル別にまとめてみました。
総合
Web配色に関する書籍は、色のイメージを中心とした見本帳のようなものがほとんどで、デザイン・マーケティング・ユーザビリティ・アクセシビリティなどを総合的に紹介している本はほとんどありません。それが私の本が世の中に存在する理由となっています。
まずざっくりとWebの配色について学びたいのであれば、自著で恐縮ですが、まず以下の2冊挙げることになります。基本的な事項は押さえられるように書いたつもりですし、それなりにまとまっていると自負しております。
上記の2冊は出版時期も出版社も異なるのですが、2冊合わせるとより効果的かと考えております。先に出版された「Webプロフェッショナルのための黄金則 Web配色デザインのセオリー (Web Designing BOOKS)」は基本的な知識を頭に入れるための教科書として、後から出版された「ウェブ配色 コーディネートカタログ」がその実例をたくさん掲載した見本帳として使えるようにと考えました。
もう1冊、「ウェブ配色見本帳 実例で学ぶWebデザインの配色」もおすすめです。解説文は私の本よりも少なめですが、配色見本は多めになっているので、こちらの方が使い勝手のよい方も多いかと思います。
これらの本はWeb配色の概論としては有効かと思いますが、細かい部分を学ぶにあたっては、各分野の専門書には量的な面で追いつけない部分がありますので、以下に紹介するような書籍を手元に置いてもらうとよいのではないかと思います。
色見本
配色サンプルとしては、シンプルに3色か4色程度の組み合わせが多く載っているものがおすすめです。変にヘッダやサイドバーがレイアウトされていたり、読めない背景色と文字が組み合わせられているようなものは、先入観を持ってしまうために、初心者にはかえって配色の邪魔になることもあります。
私はずっと「カラーイメージスケール 改訂版」を使っております。「おおらかな」とか「清らかな」という言葉と配色が記されているのと、各ページの下にちょっとしたアドバイスや解説が付いているので非常に使いやすいです。
このタイプの見本帳は好みもあると思いますが、1冊手元に置いておくならば、この本でしょうか。各社さまざまな色見本が出ていますが、中には数合わせのためのおかしな配色見本が混ざっているものもありますので気をつけましょう。
ユーザビリティ
色に関するユーザビリティの専門書はないのですが、多くのユーザビリティに関する本には、快適なサイトを実現するための色の使い方が記されています。その中でもわかりやすくまとまっているのは、「Webユーザビリティ・デザイン Web制作者が身につけておくべき新・100の法則。」でしょうか。悩みどころのほとんどはこの本で解決できますので、どのように色を適用して実現できるかを考えていくとよいでしょう。4年ほど前に発売された本ですが、基本的な部分はそれほど変わっていないので、十分役に立つと思います。
アクセシビリティ
アクセシビリティに関しては、色に特化したものはもちろん存在しません。色に配慮するだけでは、本当の意味でアクセシブルなサイトにならないことは言うまでもありません。そのため、アクセシビリティに関する本は色以外のことも合わせて考えなければなりませんが、個人的な見解としては現在のところ決定版という本がありません。JIS X8341-3:2010に対応させようとするなら、規格そのものを読むか「Webアクセシビリティ完全ガイド―2010年改正JIS規格対応」を読むかの二択となっているのが現状です。
しかしながら、そもそも色のユニバーサルデザインとはどういうものかを知りたいのであれば、他にも良書があります。「カラーユニバーサルデザイン」などは、その最たるものでしょう。色の関するバリアがどのくらい世の中に存在するか、それによって生まれる不利益がどういうものであるのかが、わかりやすく書かれていますし、解決法も提示されていますので、まず目に見える部分からという方にはちょうどよい本かと思います。
可能であれば「Webアクセシビリティ ~標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~ (Web Designing BOOKS)」を読むのがよいかと思いますが、既に絶版になっている模様で、あまりにも内容が濃く分厚いため、初心者には難しすぎるでしょう。興味のある方はamazonのマーケットプレイスでなら入手できますので、手に入れておきましょう。
雑学・歴史
雑学的な本は山ほどありますので、好みに合った物を読んでもらうとよいかと思いますが、クライアントへの提案の際に案外役立つのは色名の由来が書かれている本です。
例えばフランス雑貨のサイトで青を使いたいという場合には、単に「青」と言うのではなく、「ヴェルサイユと呼ばれる青がフランスにはあって~うんたらかんたら~で、この色を選びました」という方が説得力があるわけです。
このような色名に関する本は、和洋1冊ずつあると便利です。ものすごく多くの本がありますが、ここでは私が好きな「日本の色辞典」「色の知識―名画の色・歴史の色・国の色」の2冊を挙げておきましょう。
同じ色であっても、その使い方はデザインによって毎回変わりますし、100点満点がないのがデザインの難しいところですが、応用力を身につけるためには基礎の積み重ねが重要ですし、クライアントへの説得には豊富なボキャブラリーも欠かせません。ぜひ日々知識を積み重ねていってくださいね。
2013年1月10日追記
2013年2月に新刊「ウェブ配色 決める! チカラ - 問題を解決する色彩とコミュニケーション」がワークスコーポレーションから発売されます。
どうやって色って選べばいいの?という人やお客さんと何を話したら色でのトラブルって避けれるのといった、コミュニケ-ションや効率化の視点から色についてまとめてみました。
ご興味のある方はぜひどうぞ!